利回りとは?
利回りとは、どれくらいの収益性があるのかを示した数値のこと
資産運用に関する説明では、利回りという言葉が頻繁に登場します。利回りとは、その運用にはどの程度の収益性があるのかを数値で示したものです。
投資したり、預けたり(貸したり)した元本(元手の資金)に対し、どれくらいの割合に達する利益が一定期間中に得られるのかをパーセンテージで表します。1年間の利回りを見るのが一般的で、その計算式は「1年間に得られる収益÷元本」となります。
当然ながら、利回りが高水準であるほど、その運用の収益性は高いと判断できます。たとえば、仮に10%の利回りが得られる投資対象で100万円を運用したとすれば、年間に元本の10%(10万円)ずつ利益が増えていきます。
ただ、ここまで読み進めるうちに、頭の中で素朴な疑問が浮かび上がった方がいるかもしれません。「利回りだけではなく、金利という言葉もよく出てくるけれど、同じような意味合いなのだろうか?」というものです。
結論から言えば、両者は似て非なるものです。次で詳しく説明することにしましょう。
金利と利回りは、似て非なるもの?
複利とは?
金利とは、お金を提供してもらった(借りたり、預かったりした)側(=金融機関)が提供者に対し、元本とは別に支払う謝礼額を示す数値です。元本に対してどの程度の比率に達するのかを示しています。
こう説明されて、「だとしたら、利回りと同じ数値になるのでは?」と思ったかもしれませんが、必ずしもそうではありません。たとえば、10%の金利が提示されている金融商品に100万円を預けたと仮定しましょう。
1年後に10万円を得られるので、利回りも同じく10%となります。しかし、こうして発生した収益が翌年には元本に上乗せされて運用されていくというパターンを繰り返していく「複利」という仕組みになっていたら、事情は大きく違ってきます。
2年目は110万円に対して10%の金利の収益が発生するので受け取るのは11万円で、3年目は121万円(110万円+11万円)に対して10%に相当する12.1万円に増えます。こうして得られる収益がどんどん大きくなっていき、5年目には合計で161万510円にまで達しています。
すると、5年間の平均利回りは「61万510円÷100万円÷5年=12.2102%」となります。金利は収益を決める際の「条件」であり、利回りはそれをもとに運用した場合の「結果」ということです。
また、利息と利子という言葉もよく似ているように見えて、実は正反対の意味を持っています。利息はお金を預けた(貸した)側が元本にプラスして受け取るものです。
これに対し、利子はお金を預かった(借りた)側が元本にプラスして支払うもののこと。つまり、預貯金の利用者にとっては利息で、お金を預かった金融機関側にとっては利子となるわけです。
なお、得られた収益を運用に回していく「複利」に対し、別に貯めて当初の元本だけの運用を続けていく方式を「単利」と呼んでいます。
資産運用で得られる収益は大きく2つの種類に分けられる!
一方、資産運用によって得られる収益は2つの種類に分類できます。1つはインカムゲイン(利回り収益)で、もう1つはキャピタルゲイン(売買差益)です。
それぞれの詳しい説明に移る前に、どうして2つは区別したほうがいいのかについて考えてみたいと思います。簡単に言うと、それぞれの性格は大きく異なっていて、具体的な運用先を選ぶ際の着眼点にも違いが出てくるからです。
そして、( )書きで記した補足説明からも想像できるように、もっぱら利回りはインカムゲインの収益性を示すモノサシとして用いられています。利回りが高い投資対象ほど、より多くのインカムゲインを期待できるということです。
これに対し、キャピタルゲインのほうは値上がり率や騰落率といった価格の変化度合いで収益性を判断します。それでは、そろそろインカムゲインとキャピタルゲインが具体的に意味することについて解説していきましょう。
インカムゲイン、キャピタルゲインとは? それぞれの魅力と注意点は?
インカムゲインとは、資産を運用している間は定期的に入ってくることが期待できる収益です。預貯金の利息がその典型例で、各国の金利情勢や為替相場の動きによって金額に変化は生じうるものの、コンスタントに得られる点ではFXのスワップポイント(2カ国間の金利差が得られる収益)もインカムゲインに該当します。
まとめると、金額に多少のばらつきがあったとしても、インカムゲインは入ってくることを期待できる収益だということです。もうお気づきの方がいるかもしれませんが、キャピタルゲインは「コンスタントに」とは言いがたい収益です。
「売買差益」と並記していたように、投資した際にかかったお金(購入価格)よりも高くなった時点で売れば、売却価格との差額が利益となります。たとえば、100円で米ドルを買ったと仮定しましょう。
その後、1米ドルに交換するには120円を用意しなければならないレベルまで米ドルの価値が高まる(日本円の価値が下がる=円安になる)局面が訪れ、そのタイミングで売れば1米ドル当たり20円のキャピタルゲインが得られます。仮に1万ドルの購入だったとしたら、10万円の利益が得られた計算です。
例に挙げたようにFXで得られる為替差益は典型的なキャピタルゲインで、株式の値上がり益も同様です。また、前述したFXのスワップポイント、さらに株式の配当(株主への事業収益の分配)はインカムゲインに該当し、これらは2つの収益をともに期待できる可能性があると言えます。
しかし、それぞれには長所と短所が存在しているのも事実です。インカムゲインは着実性が魅力である反面、キャピタルゲインと比べれば収益性は見劣りしがちと言えます。
また、キャピタルゲインは市場の動き次第でインカムゲインを凌駕するハイリターンを期待できるものの、読みが外れた場合の損失も大きくなりやすいのが難点です。
こうした違いをきちんと認識し、今回の資産運用ではインカムゲインとキャピタルゲインのどちらに力点を置くのかという方針を明確にしておくのが賢明でしょう。FXや株式は両方を期待できると前述しましたが、むやみに“二兎を追う者は一兎をも得ず”の結果になりかねず、どちらかに照準を定めてもう片方は副産物的な位置づけで期待するのがよいでしょう。
たとえば、100万円を異なる利回りで5年運用すると、どんな差が出る?
最後に、インカムゲインの尺度である利回りの数値が違うと、収益性にどの程度の差が生じるのかについて確認しておきましょう。100万円の資金を5年間、0.5%と5%の利回りでそれぞれ運用してみた場合のシミュレーション結果を比較してみます。
0.5%の利回りでは5年後に101万9,944円になるのに対し、5%ならその10倍の119万9,431円まで増えるのは当たり前の話とも言えるでしょう。ここで特筆すべきは、どんなに有利な金利を提示しているネット銀行でも0.5%の利回りは期待できない一方で、それなりにリスクを取った運用であれば5%の利回りは現実に得ることは可能です。
どのようなリスクが関わってくるのかを理解し、それを抑えるための工夫を施せば、利回りを享受できる可能性は自然と高まってきます。
≪ プレミアムコンテンツ(前回記事):どんな方法で資産運用を行うのがベストか?
プレミアムコンテンツ(次回記事):夫婦で取り組む資産運用のキホンとは? ≫
【注意事項】
・本レポートは筆者の主観及び経験に基づき執筆されており、内容の正確性や完全性を保証するものではありません。筆者及び株式会社アイネット証券は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。
・本レポートはあくまでも参考情報であり、筆者及び株式会社アイネット証券は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。
・筆者及び株式会社アイネット証券の許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。