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最低賃金は誰が決める?都道府県で時給が違う理由



※本音声は、記事をもとにAIを活用して制作しています。一部、発音やイントネーション、漢字の読み方が不自然または正確でない場合がありますので、あらかじめご了承ください。
「最低賃金が今年も引き上げられる」
ニュースでこう聞くと、政府が「今年は時給を○円にします」と決めているように感じませんか?
しかし、実際はそう単純ではありません。
最低賃金は、政府が全国の金額を一方的に決める仕組みではありません。国の中央最低賃金審議会が引き上げ額の目安を示し、それを参考に各地域で改めて審議。最終的には各都道府県労働局長が地域別最低賃金を決定します。
しかも、最低賃金は全国一律ではありません。同じ仕事でも、働く都道府県によって最低ラインが違います。なぜ、わざわざ地域ごとに違う金額を決めているのでしょうか。
その理由をたどると、最低賃金は単なる「アルバイトの時給」の話ではないことが見えてきます。
経済学的な見方を借りれば、最低賃金とは社会が設ける「労働の価格の下限」ともいえる制度です。

1.最低賃金とは

最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額です。
ある地域の最低賃金が時給1,100円なら、原則として時給1,000円で働かせることはできません。最低賃金を下回る金額を労働契約で定めても、その部分は無効となり、最低賃金額と同じ金額を定めたものとみなされます。
対象になるのはアルバイトやパートだけではありません。
地域別最低賃金は、常時雇用、臨時、パートタイマー、アルバイト、嘱託など、雇用形態や呼び方にかかわらず、原則としてその都道府県内の事業場で働くすべての労働者に適用されます。
日本の最低賃金には、大きく「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。普段ニュースで「今年の最低賃金はいくらになる」と報じられるのは、主に都道府県ごとに設定される地域別最低賃金です。
通常、労働市場では企業側が提示する賃金と、働く側が求める賃金の折り合いによって実際の給与水準が形づくられていきます。
人手が足りなければ、高い給与を提示しなければ人が集まらないこともあるでしょう。反対に、仕事を求める人が多ければ賃金に下押し圧力がかかることも考えられます。
ただ、すべてを市場に任せれば、賃金が低い労働者の生活を十分に支えられない水準になる可能性があります。
そこで法律によって「少なくともここまでは支払わなければならない」という線を引いているのが最低賃金制度です。
市場で決まる賃金そのものではなく、その最低ラインを法律で保障する仕組みと考えると分かりやすいでしょう。

2.最低賃金は誰が決めている?

では、最低賃金は誰が決めるのでしょうか。
大まかな流れは、『中央で目安を示す』⇒『地域で審議する』⇒『都道府県労働局長が決定する』という3段階です。
まず、厚生労働大臣が中央最低賃金審議会に、その年度の地域別最低賃金の引き上げ額について諮問します。
中央最低賃金審議会では、都道府県を経済実態に応じてA・B・Cの3ランクに分け、それぞれについて引き上げ額の「目安」を示します。2026年度はAランクが6都府県、Bランクが28道府県、Cランクが13県です。
ここで大切なのが、中央が示した金額が、そのまま各都道府県の最低賃金になるわけではないという点です。
中央の目安を受け、今度は各都道府県の地方最低賃金審議会が地域の実情を踏まえて審議します。
最低賃金審議会は、公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成されています。つまり、賃金を受け取る労働者側だけで決めるのでも、支払う企業側だけで決めるのでもありません。
地方最低賃金審議会の答申後には、関係する労働者や使用者からの異議申出に関する手続きなどがあり、そのうえで都道府県労働局長が地域別最低賃金を決定します。
政府の賃上げ方針などが審議の背景になることはあります。それでも制度上は、「政府が全国一律の時給を一方的に決める」という仕組みではないのです。

3.2026年度「54〜56円引き上げ」

2026年度の審議を見ると、この仕組みがよく分かります。
2026年7月28日、中央最低賃金審議会は地域別最低賃金額改定の目安について答申しました。
厚生労働省の発表では、引き上げ額の目安はAランク54円、Bランク56円、Cランク56円とされています。仮にすべての都道府県でこの目安どおりに引き上げられれば、全国加重平均は1,176円。前年度から55円、率にすると4.9%の上昇になります。
ただし、ここには一つ重要なポイントがあります。
2026年度は、中央最低賃金審議会で金額について労使の意見が一致しませんでした。正式な答申にも「その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった」と記されています。そのため、54円、56円、56円という数字は、地方での審議に使う公益委員見解として示された目安という位置づけです。
そして地方では、中央の目安を参考にしながら改めて金額を議論します。
この「目安」と「地方の答申」の違いは、過去の数字を見るとさらに分かりやすくなります。
2025年度、中央の目安どおりに引き上げた場合の全国加重平均は1,118円、引き上げ額は63円とされていました。ところが地方での審議を経ると、47都道府県の答申は63〜82円の引き上げとなり、全国加重平均は1,121円、引き上げ額は66円となりました。
2026年8月20日時点で、各地の地方最低賃金審議会では答申が進んでいます。
たとえばBランクの静岡県では、中央の目安56円を1円上回る57円の引き上げ、時間額1,154円とする答申が8月12日に出されています。
つまりニュースで、「最低賃金55円引き上げへ」「全国平均1,176円へ」といった見出しを見ても、それだけで各都道府県の最低賃金が確定したとは限りません。

4.なぜ最低賃金は都道府県によって違うのか

「同じ日本なのだから、全国一律にすればいいのでは?」
そんな疑問も出てきます。
地域別最低賃金を決めるとき、法律上考慮することになっているのが、「労働者の生計費」「労働者の賃金」「通常の事業の賃金支払能力」の3つです。
生計費だけを見ても、生活に必要なお金は全国でまったく同じとは限りません。
実際の賃金水準も地域ごとに違います。産業構造や雇用環境、企業を取り巻く経済状況にも差があります。さらに考えなければならないのが、企業側の賃金支払能力です。
生活費だけを基準に急激な引き上げを続ければ、とくに人件費の比重が大きい企業や中小企業には大きな負担になる可能性があります。
反対に、企業側の事情だけを優先して賃金を低く抑えれば、物価が上昇するなかで働く人の生活が苦しくなるかもしれません。
だから最低賃金は、「物価が高いから上げる」「企業が大変だから上げない」という一つの尺度だけでは決められません。
働く人の生活、地域の賃金水準、企業が賃金を支払う力。この3つを見ながら落としどころを探す。
地域によって最低賃金が違う背景には、こうした考え方があります。

5.最低賃金の引上げが与える影響

最低賃金が数十円上がると聞いても、それほど大きな金額には感じないかもしれません。
ところが、働く時間を掛けてみると印象が変わります。
仮に時給が55円上がり、1日8時間、月20日働いた場合、単純計算では月8,800円、年間では10万5,600円の差になります。
最低賃金に近い時給で働いている人にとって、数十円の違いは決して小さくありません。
企業側から見ると、その金額を対象となる従業員の人数分負担することになります。最低賃金の引き上げ幅が大きくなれば、人件費をどう吸収するのかという経営上の問題にもつながります。

2026年度の中央最低賃金審議会の答申でも、中小企業や小規模事業者が継続して賃上げできる環境をつくるため、生産性向上への支援や価格転嫁対策などを進めるよう政府に求めています。
ここで関係してくるのが物価です。
物価が上がれば、同じ1万円でも買える商品やサービスは少なくなります。最低賃金の決定で「労働者の生計費」が考慮されるのも、賃金の額だけではなく、そのお金でどの程度生活できるのかが重要だからです。
一方で、賃金が上がれば企業のコスト増につながり、その一部が商品やサービスの価格に転嫁されるケースも考えられます。
とはいえ、最低賃金が5%上がれば物価も5%上がる、といった単純な関係ではありません。
生産性を高めて吸収できる企業もあれば、利益を削る企業もあります。競争が激しく、簡単には値上げできない業種もあるでしょう。

まとめ
最低賃金は、単に「アルバイトの時給が何円上がるか」という話ではありません。
働く人にとって賃金は生活を支える収入ですが、企業からすれば人を雇うためのコストでもあります。
どちらか一方だけを見て金額を決めることはできません。
そのため日本では、中央で目安を示したあと、労働者、使用者、公益という異なる立場の委員が地域の事情を踏まえて議論し、最終的な金額を決める仕組みが採られています。
経済学的な見方を借りれば、最低賃金は「労働そのものの値段」を国が決める制度ではなく、社会として許容する賃金の最低ラインを設ける制度と考えることができます。
毎年報じられる「最低賃金○円引き上げ」というニュース。
金額だけでなく、「誰が、何を基準に、どの段階で決めた数字なのか」まで見てみると、その向こうにある物価や企業経営、地域経済の動きまで見えてきます。

最低賃金に関するQ&A
Q1. 最低賃金は政府が一方的に決めているのですか?
A. いいえ。中央最低賃金審議会が引き上げ額の目安を示し、それを参考に地方最低賃金審議会が地域の実情を踏まえて審議します。
審議会は公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成され、最終的には各都道府県労働局長が地域別最低賃金を決定します。
Q2. なぜ最低賃金は都道府県によって違うのですか?
A. 地域によって生活費や実際の賃金水準、企業を取り巻く経済状況などが異なるためです。
地域別最低賃金は、「労働者の生計費」「労働者の賃金」「通常の事業の賃金支払能力」を総合的に考慮して決められています。
Q3. 2026年度の最低賃金は全国平均1,176円で決定したのですか?
A. いいえ。1,176円は、2026年7月28日に示された中央の目安どおりにすべての都道府県で引き上げられた場合の全国加重平均です。
各地方最低賃金審議会で地域ごとの審議・答申が行われたあと、都道府県労働局長が最低賃金を決定します。
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