カナダドルの特徴と経済・産業について徹底解説!【お金マン】
アメリカの北部に位置し、ロッキー山脈やナイアガラフォールズなど、自然豊かで観光で有名なカナダは、トレードにおいても資源国通貨として人気を博しています。
アメリカとの経済的な結びつきも強く、今後も有望な通貨として注目を集めています。
今回の記事では、カナダドルの動向と今後の見通しについて、徹底解説していきます。
この記事を読めば、
- カナダの基本情報・特徴
- 産業構造
- カナダの経済指標
- カナダドルの2020年の動向
- 今後の見通し
について理解することができるでしょう。
1.カナダの基本情報・特徴
カナダドルにはアメリカの北部に位置していることから、アメリカ経済の影響を強く受ける特徴があります。
そのため、アメリカドルの影響を受けやすいです。
下記はアメリカドルのチャート。
次に、カナダドルのチャートを見てみましょう。
このように、アメリカドルとカナダドルのチャートの形は似ており、連動性が高いと言えます。
また、天然ガスや石油などエネルギー資産を豊富に有しているため、資源国通貨として投資家から見られています。
原油価格の価格動向にも影響を受けやすく、原油価格が上昇すればカナダドルも上昇し、反対に下落するとカナダドルも下落する傾向にあります。
カナダとアメリカの関係について
上述のように、カナダドルとアメリカドルは密接に結びついていますが、産業構造についても同じく、カナダとアメリカは密接に関係しています。
2017年のCIA統計データによると、カナダの輸出のうち、約75%をアメリカが占めています。
輸入相手国としてもアメリカのシェアが最も高く、約50%をアメリカから輸入しています。
1994年に北アメリカ自由貿易協定(NAFTA)を締結以降、カナダ経済とアメリカ経済の関係は強まりました。
今では、貿易だけでなく、2国間の人の移動も盛んになっており、人的交流も大規模なものになっています。
このように、カナダとアメリカは産業構造の観点から見ても非常に関連が深いのです。
産業構造について
カナダの産業構造の特徴は、GDPの大きな割合をサービス業が占めているという点です。
具体的には、GDPの52%を情報通信・金融・不動産などが、約23%を小売、卸売、飲食・宿泊などが占めており、サービス業が全体の75%を占めています。
また天然エネルギーや鉱物の採掘も盛んに行われる資源国でもあり、GDPの約25%を資源の輸出などが占めています。
石油や天然ガスの採掘をはじめ、金・鉛・ニッケル・ウランなどを大量に発掘し、アメリカに輸出しています。
他にも製造業も大きな産業の1つであり、中でも自動車産業はカナダ産業の中でも規模が大きいです。
アメリカや日本の自動車メーカーがカナダに製造拠点を構えており、自動車部品メーカー大手も、カナダに製造拠点を構えています。
2.カナダの財政状況
カナダの財政状況については、政府総債務残高が対GDP比117%と、先進国の中では比較的債務残高が多いです。
一方、アメリカなどに比較して債務残高が少ないこともあり、すぐに財政危機に陥る可能性は低いといえます。
また、債務残高から、政府が保有している外貨準備高などの金融資産を差し引いた政府純債務残高で見ると対GDP比32.97%と、他の先進国と比較しても少ないため、財政面の健全性は非常に高いです。
3.カナダドルの政策金利の動向
カナダの政策金利は、ここ数年はアメリカの金融政策動向に伴い、低金利で推移しています。
2008年4月には4.0%だった政策金利は、その後のリーマンショックにより0.25%にまで引き下げられました。
その後、2017年までは0.25%〜0.75%の間で推移し、2018年に1.75%に再度引き上げられました。
しかし、2020年に新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、景気刺激策として再度政策金利が引き下げられました。
2021年6月時点では、0.25%で推移しています。
4.カナダの経済指標
カナダの経済指標は様々ありますが、以下の指標が特に重要です。
- 四半期GDP
- 雇用統計
- BOC政策金利発表
具体的に見ていきましょう。
四半期GDP
カナダのGDP(国内総生産)は四半期ごとにカナダ統計局が発表します。
GDPは経済規模を測る上で最重要指標であり、GDPの成長率が昨対比どれくらい伸びているのか、市場関係者は注目しています。
市場予想よりもGDP成長率が高ければカナダドルは買われ、低ければ売られやすくなります。
雇用統計
カナダの雇用統計はカナダ統計局が毎月第一週目の金曜日に発表する指標です。
毎月第一週目に失業者と新規雇用者数を発表するのですが、労働市場が拡大しているかどうかは、サービス業がGDPの約75%を占めるカナダにとって影響が非常に大きいです。
雇用統計の発表の日は市場が大きく動くため、トレードチャンスであるとともに、変動によるリスクも高まるので注意しましょう。
BOC政策金利発表
政策金利は、カナダ中央銀行(BOC)が年8回の金融政策決定会合において発表します。
政策金利はカナダ中央銀行(BOC)が決定しますが、アメリカの政策金利を決める機関であるFRBの動向に少し遅れる形で追随する傾向にあります。
FRBでは当面の間利上げを打ち出さない方針でいるため、カナダの政策金利も利上げは当面はしない可能性が高いです。
5.カナダドルの2020年の動向
2020年のカナダドル相場の動向は、他国と同じく、新型コロナウィルスに大きな影響を受けました。
3月には世界中でロックダウンが起こる中、カナダドルもリスク回避の影響を受け、85円台から73円台にまで売られました。
その後、夏場にかけてはレンジ相場が続き、6月にレンジ相場を上抜けし、再度レンジ相場を形成しています。
その後年末まで77円台〜82円台でのレンジ相場にてもみ合いが続きました。
6.カナダドルの今後の見通しについて
今後のカナダドルの見通しは、結論、大きな上昇は見込めないものの、アメリカ経済の復調により相場を下支えするため、1カナダドル=85円〜95円のレンジを想定します。
下記の3つの観点から考えていきましょう。
- アメリカ経済の動向
- 原油価格の動向
- BOCの金融政策についての考え方
カナダはアメリカ経済と密接な関係にあるため、アメリカ経済が復調していくと、連動してカナダ経済も復調の兆しが見えてきます。
アメリカではバイデン政権において追加の経済政策を打ち出したことに加え、新型コロナウィルスのワクチンの普及が期待されています。
ワクチンの普及が進むと経済復旧の兆しが出てくれば、カナダ経済にも大きな追い風となります。
一方で、原油価格は2006年以降総じて軟調な展開になっており、世界各国で環境に配慮した政策が打ち出されているため、大きな需要は見込めません。
下記が原油価格のチャートです。
2008年に147ドル/1バレルという高値をつけて以降、現在にかけても下降トレンドが継続しています。
そのため、今後原油価格は、一定のレンジでもみあいながらも上昇トレンドに転じる可能性は低いと考えられます。
最後にカナダ中央銀行の金融方針について考えましょう。
カナダ中央銀行の方針としては、政策金利の引き上げは先になる、という方針を表明しています。
そのため、金利面の観点から相場に好影響を与える可能性は低いと考えられます。
一方で、金融緩和政策の縮小(テーパリング)を他国に先んじて行っています。
カナダ経済が金融緩和策を必要としなくなっていることを表しているので、相場の下支えの材料になっています。
7.まとめ
今回の記事では、カナダドルについて、基本的な特徴や産業構造、経済状況、アメリカとの関係性、2020年の相場動向と今後の見通しについて解説しました。
年始よりカナダドルは力強く上昇を続けていますが、原油価格の上昇トレンドが見込めない点と、政策金利の引き上げタイミングが先になる、という観点から上昇余地は限られていると考えた方がよいでしょう。
とはいえ、新型コロナウィルスのワクチン普及が進むなどアメリカ経済に復興の兆しが見えてくれば、カナダ経済にも追い風となるため、相場の下支えとなります。
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