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「不安ビジネス」に釣られてはいけません【鹿子木健】

SNSやYouTubeが全盛のいま、金融商品や投資法をネットで発信するインフルエンサーが増えています。彼らの中には確固たる実績を持っている人も多く、トレーダーの憧れを一心に集める「お手本」もいます。
サービス精神旺盛なインフルエンサーには「有料級の情報を無料で公開」と謳い、巧みな話術を駆使で多くのフォロワーを集めている人もいます。しかし、そうした「無償の善意」には裏があるケースもある点には注意が必要です。
今回は、引っ掛かる人が後を絶たない「不安ビジネス」についてお話しします。
1.投資インフルエンサーが投資以外で稼ぐ仕組み
昨今では、インフルエンサーや芸能人が証券会社のコンテンツに顔出しで登場していることを目にするのも増えてきました。この場合、彼らは企業やメディアの広告を請け負っており、インフルエンサー個人の発信ではありません。
そうではなく、インフルエンサーが個人で情報発信する場合は、消費者がより受け入れやすい形になる傾向があります。分かりやすく、親しみやすく、寄り添ってくれる雰囲気に、人々は魅力を感じます。それ自体はもちろん良いことです。
しかし、彼らは善意のボランティアばかりとは限りません。有料チャンネルやオンラインサロンへ誘導し、対価を受け取って助言するケースには注意が必要です。
「継続的・反復的に対価を得る助言行為」を、金融庁への登録なしで行っている可能性があり、そうした行為は金融商品取引法に抵触するからです。
本来、投資助言・代理業は金融庁への登録が必要であり、資格を持たない者が具体的な売買判断や投資対象を推奨するのは違法行為となり得ます。
こうした行為が横行する背景には、「情報を出す側の利益動機」があります。彼らの収益源は広告収入やアフィリエイト報酬、セミナー販売など、「投資以外の場所」にあることが多く、無料で情報を提供しているのは、あくまで集客のための入り口にすぎません。
もちろん、有益な情報には対価があって然るべきです。蓄積してきた情報や経験が他者に役立つものであれば、法に反しない限りはお金を取ってもよいと思います。
しかし「無償」「今だけ無料」といった文言は、誰かの利益の裏返しである可能性は、頭に入れておきましょう。
2.人間の「不安」はビジネスターゲットになる
ビジネスは、需要を発見したり掘り起こしたりして、商品やサービスを供給することによって成り立ちます。人間心理の「不安」「欲」「コンプレックス」も、そうしたビジネスの対象になるのです。
自分の島に誘導するインフルエンサーはこれらを熟知しています。彼らが多用するのは、人間の心理を突いたマーケティング手法。特に多いのが「欠乏感」「不安感」「期待感」という3つの感情を巧みに利用するパターンです。
「今のままでは老後が危ない」「このチャンスを逃せば一生後悔する」「この方法であなたの人生は変わる」。皆さんもこうしたフレーズを見たことがあるはずです。街頭で、電車の中吊りで、ブラウザでこうした広告はマーケティングの基本なのです。
こうした言葉は、私たちの心に「今すぐ動かないと損をする」という焦りを植え付けます。そして、その不安や欠乏を埋める手段として、自らの商品やサービスへと誘導していくのです。
これは決して特殊な詐欺的手法ではなく、マーケティングの構造がそうなっているのです。しかし、金融や投資という「生活の基盤」に直結する領域でこれを行われると、冷静な判断が麻痺し、必要のないリスクを取ってしまう危険性があります。
3.大切なのは主体性です
こうしたビジネスの最大のターゲットになるのは、自分で判断せず、誰かに縋りつくように答えを求める人です。
「誰かに教えてもらえば安心」「正解を知っている人についていけば自分も成功できる」と考える人ほど、無批判に情報を信じ込み、危険な商品に言われるがまま手を出してしまう傾向があります。
考えてみてください。あなたが投資に用いる大切なお金を、人任せにしていいのでしょうか。投資は「自分の意思で判断する世界」です。最終的な決断は自分が下すべきです。
主体性を持たない姿勢でいる限り、手口を変えた甘い誘いに何度でも引っかかってしまうでしょう。最も重要なのは、「自分のお金は自分で守る」という意識です。
インフルエンサーの発信は参考になるものも非常に多いです。発信の方法も実に工夫されており、お手本にできるものです。
だからといって、彼らの情報を鵜呑みにするのではなく、その情報の根拠や出所、そして発信者の利益構造まで一歩踏み込んで考えることが大切です。その習慣こそが、情報過多の時代を生き抜く最大の防御になります。
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