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ファンダメンタルズやテクニカルを「目的」にしてはいけません【鹿子木健】

FXの相場を読み取る道しるべとなる代表的なものには「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」があります。
ファンダメンタルは「根本」「基本」「原理」などと訳される単語です。ファンダメンタルズは「相場を動かす根本的な諸原因」ということができるでしょう。
テクニカルは文字通り「技術的」なことです。チャートを利用して値動きを分析することといえるでしょう。
これらの分析は非常に大切なことです。しかし、ファンダメンタルズ分析もテクニカル分析も、相場を知るための手段にすぎません。指標を追究しすぎて「手段の目的化」になってしまっては本末転倒というものです。
1.ファンダメンタルズは先行指標です
ファンダメンタルズの特徴は、先走りすぎることです。ファンダメンタルズの良好な通貨も、その価値が市場に認識されるまではある程度時間がかかります。
例えば、スマートフォンのような、新しい価値観を創出するような商品が世に出た場合、発売日から人々が大行列を作ることは珍しいです。事前のマーケティングが十分であっても、実際に売れ出すまではタイムラグが生じます。
このように、実態と市場価値の一致には、時間差が存在します。通貨もこれは同様で、価値が市場に浸透するまで時間がかかるのです。そしてこの時間差が埋まることはありません。
ファンダメンタルズの結果が良くてもすぐには上昇せず、その後しばらく時間をおいてから上昇していったりします。数日後になることもあれば、数か月後になることもあります。そのような意味で、ファンダメンタルズは先行指標といえます。
具体的な取引でいえば、ファンダメンタルズの良好な通貨が暴落したら迷わず買う、というのも、立派な一つの戦略になりえます。そういった通貨は、一時的には暴落しても、時間が経てばいずれその価値にふさわしい値がつくことになるためです。
2.テクニカル指標は遅行指標です
テクニカル分析の特徴は、チャートに依存するということです。チャートがなければ、テクニカル分析はできません。最もポピュラーなテクニカル分析の一つである「移動平均線」を例にとってみましょう。
21日移動平均線は、過去21本のローソク足終値の平均値です。現在の価格が高いか安いか、今後どちらの方向に動く可能性が高いのか、どこでエントリーすればよいか、そういったものをチャートから知るためのヒントになります。
ここでポイントになるのは、「現在の分析が成立するために、過去のチャートが必要である」ということです。テクニカル分析は過去の積み重ねでできているため、どうしても遅れた情報しか出てきません。これが「テクニカル指標は遅行指標だ」といわれる所以です。
3.どちらの指標にも欠けているもの、それは
ファンダメンタルズが先行指標、テクニカルが遅行指標であるとすれば、その中間になるものが欠けています。現在の相場を知る、つまり「今どうすればいいのか」を知る情報が抜けているわけです。
ファンダメンタルズとテクニカルのバランスを取れば良いのだ――普通の人はそう考えるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか?
ここまでに述べたように、ファンダメンタルズもテクニカルも「手段」です。手段と手段のバランスを取るというのはおかしな話で、それこそまさに「手段の目的化」になってしまいます。
投資家が知りたいのは「現在の相場がどうなのか」、もっといえば「どう取引すれば利益になるのか」という情報です。どちらの指標にも欠けているもの、それは「今どう動くべきか」という具体的な判断基準です。
ファンダメンタルズもテクニカルも、確かに相場を読む手助けにはなります。しかし、どちらも「今ここで売るべきか」「ここで見送るべきか」という判断までは教えてくれません。
だからこそ、自分の中に「判断の軸」を持つ必要があるのです。
・こういう場面では、こうする
・この条件が揃ったら、こう仕掛ける
・逆行したら、ここで撤退する
そのような「行動に結びつく基準」が、分析とは別に必要になってきます。指標に頼るのではなく、自分の中にルールを持つこと。それこそが、現在の相場に対応する「真の一致指標」となるのではないでしょうか。
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