必ず押さえよう!大震災と為替相場動向の関連について【お金マン】
今年で東日本大震災が起こってから10年になります。
日本に大きな亀裂をもたらした災害ですが、大地震などのような災害が起こると、為替相場にも大きな影響をもたらします。
FX初心者の方は、こうした災害時に為替相場が大きく動きやすい、という知識がないと損失を出してしまう可能性があります。
今回の記事では災害とFX・為替相場との関係について徹底解説していきます。
この記事を読めば、
- 1995年阪神淡路大震災の際の為替相場の動き
- 2011年東日本大震災の際の為替相場の動き
- 災害時になぜ為替が大きく動くのか?
- リパトリエーションとは何か?
- 投機筋の思惑
といったことがわかります。
1995年 阪神淡路大震災の際の為替相場の動き
1995年1月17日に、阪神淡路大震災が発生しました。
その時の米ドル・円の為替相場は下記のとおりです。
地震発生前までは1ドル=100円を挟んで推移しておりましたが、地震の発生以降、急速に円高が進んでいきます。
2月末から円高が加速していき、4月後半になると1ドル79.75円をつけています。
これは、1973年の変動相場制に移行して以降、円ドル相場の最安値です。
発災直後には大きな円高進行は見られなかったのですが、1‐2ヶ月より大きく相場が動き始め、3か月ほどは円高が継続したもようです。
その後は、大きな円高相場の反動として、円安方向にリバウンドしていき、9月になると1月時点の1ドル100円台にまで回復していきます。
2011年 東日本大震災の際の為替相場の動き
2011年3月11日には、記憶に新しい東日本大震災が発生しました。
その当時の為替レートが下記の図です。
3月11日(金)に大震災が発災した直後から、急速に円高ドル安が進行しました。
翌週の3月17日には1ドル76円台と、阪神淡路大震災の際の水準を超えるほど円が買われドルが売られました。
直後、一度は反発し円安方向になりましたが、再度円が買われるようになっていき、8月15日には75.850円を、10月31日には75.32円と、ドルの最安値を更新していきます。
この円高ドル安トレンドは、2012年の総裁選挙・自民党の当選、アベノミクスの開始まで継続していきます。
東日本大震災の際も、地震の発災からタイムラグが生じ、数か月経過した後に円高ドル安の勢いが増していっています。
なぜ地震が発生したにも関わらず円高が進行するのか?
このように、阪神淡路大震災や東日本大震災が発生した際には、タイムラグがありながらも円高トレンドに為替が動いています。
通常の考え方であれば、災害が発生した→経済的なダメージが大きい→その通貨を売るべき→通貨安という動きになります。
しかし、日本で発生した大震災の場合はこのように動いておりません。
むしろ、円高ドル安の傾向に拍車がかかっています。
何故なのか、理由を見ていきましょう。
円高が進行する理由①リパトリエーションの発生
円高が進行する要因としてまず考えられるのが、リパトリエーションです。
リパトリエーションとは日本語で「本国送還」を意味しています。
金融用語としては、企業や投資家が海外から本国に資金を引き上げることをいいます。
大震災が発生すると、当然のことながら復興のために大量の資金が必要となります。
震災からの復興のために、日本政府は大量の「円」が必要となり、それを調達する為に保有している外貨資産を売却します。
それにより、ドル売り・円買いの圧力が強まります。
また、日本政府だけでなく日本の企業や保険会社もリパトリエーションを行います。
特に日本の場合はメーカーが多く、特に地方に工場の拠点を構えている企業が多いです。
阪神淡路大震災の際や東日本大震災の際にも、そういった工場に大きなダメージが与えられました。
早期復旧のための資金を調達するために、外貨資産を売却し日本円に変換したため、ドル売り円買いの傾向が強まります。
これに加えて、保険会社も地震保険を支払うために保有の外貨資産の売却・円への変換を行った、と考えられています。
円高が進行する理由②リスクオフ・円キャリートレードの巻き戻し
上記のような実需的な資金の流れに加えて、投資的な側面も要因に考えられます。
投資家としては、大震災のようなイベントが発生してしまった場合、リスクを極力避けるために、安全資産に資金を移そうと考えます。
特に、円キャリートレードの解消を早急に行うようになります。
円キャリートレードとは、日本円のように金利の低い通貨を借り入れ、それを売却して新興国通貨などの高金利通貨を買い、金利差分を安定的に得ようとする手法です。
ところが、こうした取引において新興国通貨はリスクオフ相場になると真っ先に売却の対象となります。
高金利通貨を売却し、借り入れていた円を返済する、という動きになり、円買いが進行します。
このような円キャリートレードの巻きなおしは、リスクオン相場からリスクオフ相場へ切り替わるタイミングで発生します。
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円高が進行する理由③投機筋の思惑
上記のような資金の流れを想定した投資家・トレーダーが、「この局面では一気にドル売り・円買いが進行するのでは」とにらみ、便乗して円買い・ドル売りのトレードをしかけます。
特に海外のヘッジファンドは、どのような為替環境においても「絶対収益」をあげることが求められています。
このような相場になると、上記のようなお金の流れを想定したヘッジファンドが大量の資金を使って一気に円買い・ドル売りのトレードをしかけてきます。
また、ヘッジファンドでなくても、多くの投資家の中で、なぜか「有事の円買い」という共通認識があります。
地震に限らず、経済にマイナスな動きやイベントが発生してしまったら円を保有しよう、という傾向があります。
こうした背景もあり、円高ドル安の傾向に一気に拍車がかかっていきます。
地震発生=必ずしも円高ではない
一方で、大地震が発生したとしても必ずしも円高ドル安になるとは限らない、という点も留意しておきましょう。
例えば、2016年11月に福島沖で発生した地震では、M7.4を観測と、非常に大規模な地震になりました。
ところが、その当時の為替レートは円高ドル安には触れていないのです。
下記の図をご覧ください。
丸で囲った部分で、福島沖地震が発生しましたが、地震発生後、2016年末にかけて円安ドル高トレンドが継続しています。
このように、大地震が発生したとしても必ず円高になるわけではありません。
恐らく、投機筋の思惑として「阪神淡路大震災や東日本大震災の時と比較すると、被害状況やニュースのインパクトに欠ける」と考え、大きく円買い・ドル売りを仕掛けなかったのでしょう。
まとめ
今回の記事では、災害の発生と為替相場の動向について解説していきました。
1995年の阪神淡路大震災や2011年発生の東日本大震災のように、日本に大きな傷跡を残すような大震災が起こった場合は、円高ドル安傾向にふれやすいです。
その理由としては、
- 資金の実需的な側面(リパトリエーション)
- リスクオフ相場・円キャリートレードの巻き戻し
- 投機筋の思惑
があげられます。
ただし、大きな震災が起こる=必ず円高ドル安になるのではないという点には気を付けましょう。
また、震災発生した直後は、相場の逆方向への反発も含めて、相場が乱高下しやすいです。
こうした環境下では思わぬ損失を出さないように、慎重にトレードをしていくようにしましょう。
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