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スイスフランショックはなぜ起きた?突然の政策撤廃と相場急変の理由



※本音声は、記事をもとにAIを活用して制作しています。一部、発音やイントネーション、漢字の読み方が不自然または正確でない場合がありますので、あらかじめご了承ください。
2015年1月15日、外国為替市場でスイスフランが一気に上昇しました。
きっかけは、スイス国立銀行(SNB)が続けてきた「1ユーロ=1.20スイスフランを下回らせない」という最低為替レートの撤廃です。
金融庁の資料では、この日のスイスフランはユーロに対して約30%上昇したと整理されています。
この出来事は「スイスフランショック」と呼ばれ、FXの歴史を振り返るうえで外せない相場急変の一つです。
価格があまりにも急激に動いたため、ロスカットが想定した価格で成立せず、預けていた証拠金を超える損失を負った投資家もいました。
では、なぜスイスの中央銀行は、それまで守り続けてきた為替レートを突然撤廃したのでしょうか。
単純に「中央銀行が市場に負けた」という話ではありません。背景には、スイスフラン高から国内経済を守るための政策と、それを維持するために膨らんでいった負担がありました。
この記事では、最低為替レートが導入された理由から、維持の仕組み、撤廃に至った背景、相場が瞬時に動いた理由まで順番に見ていきます。

1.なぜスイスフラン高を止める必要があったのか

スイスフランは、金融市場が不安定になると買われやすい通貨の一つです。
2011年当時は欧州債務問題などを背景に世界の金融市場で不安が高まり、スイスフランへの需要が強まっていました。
通貨が買われれば、その通貨の価値は上がります。
しかし、スイスにとって急激なスイスフラン高は歓迎できるものではありません。
たとえば、スイス製の時計を海外へ100スイスフランで輸出していたとします。スイスフラン高になれば、海外の消費者が自国通貨で支払う金額は大きくなります。
つまり、スイスフラン高になるほど、海外から見たスイス製品やサービスは割高になりやすいのです。
輸出企業や観光業には逆風となり、輸入品の価格が下がることで国内の物価を押し下げる力も働きます。
スイス国立銀行は2011年9月6日、当時のスイスフランについて「大幅な過大評価」の状態にあり、スイス経済への深刻な脅威やデフレの危険があると説明しました。
そこで導入したのが、1ユーロ=1.20スイスフランを最低ラインとする政策です。
たとえば、ユーロ/スイスフランが1.20から1.10へ下がった場合、1ユーロを買うために必要なスイスフランが少なくなります。
これはスイスフランの価値が上がった、つまりスイスフラン高を意味します。
スイス国立銀行は、この1.20を下回る動きを防ぐため、必要であれば無制限に外貨を買うと表明しました。
完全な固定相場制にしたわけではありません。
1.20よりユーロ高・スイスフラン安になることは認めながら、反対方向のスイスフラン高だけを止める「片側の壁」をつくったのです。

2.最低為替レートはどのように守られていた?

市場でスイスフランを買う動きが強まり、ユーロ/スイスフランが1.20を下回りそうになった場合、スイス国立銀行はスイスフランを売り、ユーロなどの外貨を買います。
中央銀行が大規模な外貨の買い手になれば、ユーロを支え、スイスフラン高を抑える力が働きます。
大きな意味を持ったのが、スイス国立銀行による「無制限に外貨を買う用意がある」という宣言でした。
市場参加者がその言葉を信用していれば、「どうせ1.20付近では中央銀行が介入する」と考えます。
すると、1.20を下回るスイスフラン高を見込んで積極的にスイスフランを買う取引は仕掛けにくくなります。実際の為替介入だけでなく、中央銀行の宣言そのものが相場の動きを抑える役割を果たしていたわけです。
最低為替レートは2011年9月6日から2015年1月15日まで、約3年4か月にわたって維持されました。
スイス国立銀行は後に、この政策によってスイスフランの極端な過大評価が一部修正され、国内経済を深刻な被害から守ることができたと説明しています。
ただし、為替レートを一定の水準で支え続けるためには、その反対側にある売買需要を中央銀行が受け止めなければなりません。
スイスフランを買いたい資金が増えれば増えるほど、スイス国立銀行はスイスフランを供給し、その代わりに外貨を買う必要があります。
結果として、中央銀行が保有する外貨資産は膨らんでいきます。
「無制限に外貨を買う」という宣言は強力でも、政策を維持する負担やリスクまで消えるわけではありません。

3.なぜスイス国立銀行は突然撤廃したのか

2015年1月15日、スイス国立銀行は最低為替レートを撤廃すると発表しました。
同時に、一定額を超える当座預金に適用する金利をマイナス0.75%へ引き下げています。
背景の一つにあったのが、主要通貨圏の金融政策の違いです。
当時、ユーロは米ドルに対して大きく下落していました。
スイスフランをユーロと強く連動させる政策を続ければ、ユーロ安につられてスイスフランも米ドルなどに対して下落します。
最低為替レートを導入した2011年当時と比べると、スイスフラン全体の過大評価も和らいでいました。
つまり、同じ政策を続ける必要性そのものが、導入当初より小さくなっていたのです。
さらにユーロ安が進めば、1.20という最低レートを守るために、スイス国立銀行はより大規模な為替介入を続ける必要があります。
市場環境が変化するなかで、スイス国立銀行は最低為替レートを維持するメリットよりも、政策を続ける負担のほうが大きくなったと判断したと考えられます。
では、なぜ事前に撤廃を知らせなかったのでしょうか。
仮に「来週から1.20を守りません」と知らせれば、撤廃前にスイスフランを買おうとする注文が一気に増える可能性があります。
そうなれば、撤廃するその日まで1.20を守るための介入額がさらに膨らみます。
そのため、政策変更は市場にとって不意打ちになりました。

4.なぜ相場は約30%も動いたのか

最低為替レートが機能していた間、市場には、
「1.20付近まで下がれば、スイス国立銀行が外貨を買ってスイスフラン高を止める」
という共通認識がありました。
ところが、その前提が2015年1月15日に突然なくなります。
それまで相場を支えていた巨大な買い手が、一瞬で市場から退いたのです。
同時に、スイスフランを買いたい注文が殺到しました。
売りたい人と買いたい人のバランスが大きく崩れ、取引できる価格が一気に飛びます。
金融庁の資料では、スイスフランショック時の対ユーロの変動幅は約30%とされています。
このような場面では、画面に表示される買値と売値の差である「スプレッド」が急激に広がったり、価格配信が一時的に不安定になったりすることがあります。

FXの逆指値注文やロスカットも、指定した水準に到達した瞬間の価格で必ず成立するとは限りません。
ロスカット水準に達しても、その価格で反対売買できる注文が市場になければ、すぐに約定するとは限らないからです。
次に取引できる価格が大きく離れていれば、ロスカット水準を超えた不利な価格で約定することがあります。
たとえば100円でロスカットされる予定だったとしても、相場が100円から一気に95円へ飛び、その間に取引できる価格がなければ、100円で決済できる保証はありません。
金融庁はFX取引で未収金が発生する原因として、相場急変時の一時的な流動性の低下や、ロスカット水準と実際の約定価格とのずれを挙げています。
スイスフランショックは、ロスカットが損失額そのものを保証する仕組みではないことを改めて示した出来事でもありました。

5.スイスフランショックから学ぶリスク管理

スイスフランショックは極端な出来事ですが、得られる教訓はスイスフランだけに限りません。
中央銀行の方針を「永久の保証」と考えない
中央銀行の政策は、経済や市場環境に応じて変更されます。
どれだけ強い言葉で政策継続が示されていても、前提条件が変われば方針が変わる可能性があります。
中央銀行の政策は重要な相場材料ですが、将来の為替レートを保証するものではありません。
値動きが小さい時期ほどポジションを大きくしすぎない
一定の水準が長く守られていると、「ここから大きく動くことはないだろう」と考えたくなるかもしれません。
その結果、取引数量を増やしたり、証拠金に対して大きなポジションを持ったりすることがあります。
しかし、長く続いた安定が政策や特定の市場参加者によって支えられている場合、その前提が崩れたときの変動は大きくなることがあります。
過去の値動きが小さかったからといって、将来の最大損失まで小さいとは限りません。
ロスカットまでの距離だけで安全性を判断しない
通常の相場であれば十分に見える証拠金余力も、価格が飛ぶような場面では短時間で失われる可能性があります。
「ここまで下がればロスカットされるから大丈夫」と考えるのではなく、取引数量を抑える、重要なイベントを控えているときはポジションを見直す、特定の通貨に資金を集中させないといった管理も必要です。
「予想外」を前提に資金管理を考える
すべての政策変更や相場急変を事前に予測することはできません。
為替取引では「何が起きるか」を正確に当てることだけに意識を向けるのではなく、予想外の値動きが起きても資金全体に致命的な損失が出ない取引量に抑えることも大切です。
スイスフランショックが残した大きな教訓は、「予想すること」だけでなく、「外れたときにどうなるか」まで考えておく必要があるということでしょう。
まとめ
スイスフランショックは、2015年1月15日にスイス国立銀行が、1ユーロ=1.20スイスフランの最低為替レートを突然撤廃したことをきっかけに起きました。
最低為替レートは、急激なスイスフラン高による輸出企業などへの打撃やデフレリスクを抑えるため、2011年に導入された政策です。
約3年4か月にわたって維持されましたが、ユーロ安などによって市場環境が変化し、政策を維持するために必要な為替介入の負担も大きくなっていきました。
そして2015年1月、スイス国立銀行は最低為替レートを撤廃します。
それまで相場を支えていた中央銀行の存在が突然なくなり、スイスフランを買う注文が殺到した結果、スイスフランはユーロに対して約30%上昇しました。
相場が急変すれば、ロスカットも予定した価格で成立するとは限りません。
スイスフランショックが示したのは、中央銀行の宣言も、ロスカットも、相場で発生する損失を完全に防いでくれる保証ではないということです。
FXでは政策の方向を読むだけでなく、前提が崩れたときにも耐えられる取引数量と証拠金余力を考えておくことが大切です。

スイスフランショックに関するQ&A
Q1. 最低為替レートは固定相場制だったのですか?
A. 完全な固定相場制ではありません。
1ユーロ=1.20スイスフランよりスイスフラン高になることを防ぐ一方で、ユーロ高・スイスフラン安方向への変動は認められていました。
そのため、両方向の為替レートを固定するのではなく、スイスフラン高方向にだけ下限を設ける仕組みでした。
Q2. スイス国立銀行は市場に負けたのですか?
A. 単純に市場に押し切られたと考えるのは適切ではありません。
市場環境が変わるなかで最低為替レートを維持するために必要な介入規模が大きくなり、政策を続ける合理性や持続可能性を考えた結果、スイス国立銀行自身が撤廃を決めました。
Q3. 同じようなショックは再び起こりますか?
A. まったく同じ出来事が繰り返されるとは限りません。
ただし、固定・管理された為替制度の変更や、中央銀行による予想外の政策変更、市場の流動性が急激に低下する場面では、短時間で価格が大きく動く可能性があります。
そのためFXでは、通常時の値動きだけでなく、想定を超える急変が起きる可能性も考えて資金管理を行うことが重要です。
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