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郵便貯金を始めた人物「前島密」とは?日本に貯蓄を広めた理由と仕組み

「毎月、余ったお金を貯金しよう」そう考えているのに、月末になるとほとんど残っていない。そんな経験がある人は少なくないでしょう。
お金を貯めるには、節約を意識するだけでなく、使う前に貯蓄分を取り分ける仕組みを作ることが大切です。
現在は、給料日に別の口座へお金を移したり、自動積立を設定したりできます。しかし、日本で一般の人が利用しやすい貯蓄の仕組みが整い始めたのは、明治時代に入ってからでした。
その普及に大きく関わった人物が、「日本近代郵便の父」と呼ばれる前島密(まえじま・ひそか)です。

前島密は、全国へ広がる郵便局のネットワークを活用し、一般の人がお金を預けられる郵便貯金の導入を進めました。
今回は、前島密がなぜ郵便貯金を始めたのかをたどりながら、現代の家計管理にも通じる「貯蓄を続ける仕組み」について考えます。
1.前島密(まえじま・ひそか)とは?
前島密は、近代郵便制度をはじめ、郵便為替や郵便貯金など、日本の近代的な社会基盤づくりに関わった人物です。
前島密は、1835年に現在の新潟県上越市にあたる地域で生まれました。
明治政府に出仕した後、日本の近代化に必要な制度づくりに携わり、特に近代郵便制度の確立に尽力した人物として知られています。国立国会図書館でも、前島密は近代郵便制度を確立した人物として紹介されています。
当時の日本では、手紙や荷物の輸送に主に飛脚が利用されていました。しかし、料金や配送方法は統一されておらず、遠方へ安定して情報を届ける仕組みも十分ではありませんでした。
その構想をもとに、1871年、東京・京都・大阪を結ぶ近代郵便事業が始まり、翌1872年には郵便網が全国へ広げられました。
前島密の功績は郵便制度だけではありません。
郵便為替や郵便貯金のほか、鉄道、海運、新聞、教育など、日本の近代的な社会基盤づくりにも関わりました。
なかでも郵便貯金は、一般の人と金融サービスを結びつける重要な仕組みとなっていきます。
2.イギリスの郵便貯金の役割
前島密はイギリスで郵便局が金融サービスを扱う仕組みを学び、日本で郵便為替と郵便貯金を導入するための制度づくりを進めました。
前島密が郵便貯金に注目したきっかけは、イギリス滞在中に現地の制度を学んだことでした。
当時のイギリスでは、郵便局が手紙の受付だけでなく、為替や貯金などの金融サービスも扱っていました。
各地にある郵便局を窓口とすることで、より多くの人が送金や貯金を利用できる仕組みが整えられていたのです。

帰国後、前島密は郵便為替と郵便貯金の制度づくりに取りかかります。
ただし、構想がすぐに実現したわけではありません。
制度を始めるには、運営資金を確保し、金銭の受け渡しや計算を担当する人材を育て、簿記や金利などの仕組みを整える必要がありました。
郵便為替については、取扱者に計算方法や証書による金銭の受け渡しを練習させ、1875年1月2日に国内110の郵便局で取り扱いが始まりました。
郵便貯金についても1873年には規則案が作られていましたが、簿記を扱える人材や金利などの問題があり、開始は1875年5月2日となりました。
なお、制度の開始当初は、現在のように「郵便貯金」という名称ではなく、単に「貯金」と呼ばれていました。「郵便貯金」という名称が使われるようになったのは、1887年以降です。

3.すぐには広まらなかった郵便貯金
郵便貯金を普及させるには、窓口を作るだけでなく、制度の安全性や将来のために貯蓄する意味を伝える取り組みが必要でした。
現在では、銀行や郵便局にお金を預けることは珍しくありません。
しかし、郵便貯金が始まった当時の日本では、一般の人が金融機関へ定期的にお金を預ける習慣は、現在ほど広く定着していませんでした。
手元に余裕のあるお金が少ない家庭も多く、そもそも「将来のために少しずつ貯金する」という考え方を知ってもらう必要がありました。
新しく始まった制度に対して、
「預けたお金は本当に戻ってくるのか」
「手元に置かず、わざわざ預ける必要があるのか」と不安を感じる人がいたとしても不思議ではありません。
郵政博物館によると、郵便貯金の貯蓄者数は、開始初期には917人にとどまっていました。
そこで前島密は、自ら貯蓄の必要性を伝える文章を書くなど、貯蓄思想の普及に取り組みます。その結果、貯蓄者数は1878年には1万人へ増加しました。

つまり、郵便貯金は窓口を作っただけで自然に広がったわけではありません。制度の安全性や、将来のためにお金を残す意味を、人々に理解してもらう取り組みが必要だったのです。
これは現代の家計管理にも通じます。
貯金用口座を作っただけでは、お金は自動的に貯まりません。何のために貯めるのかを決め、毎月実行できる仕組みにすることが大切です。

4.郵便局が身近な貯金の窓口になった
郵便局のネットワークが広がったことで、銀行が身近にない地域でも、貯金や送金の金融サービスを利用しやすくなりました。
郵便貯金は、当初から日本全国すべての郵便局で利用できたわけではありません。
制度開始後、郵便局のネットワークとともに、貯金を利用できる地域も広がっていきました。
銀行が身近にない地域でも、地域の郵便局を貯金や送金の窓口として利用できるようになったことは、金融サービスの普及に大きな意味を持ちました。
2025年には、郵便貯金の開始から150年を迎えました。郵政博物館では、郵便貯金の始まりから現在までを紹介する記念展示も行われています。
郵便貯金が長く利用されてきた背景には、金利だけでなく、身近な場所で継続して利用できる仕組みがあったことも挙げられるでしょう。
貯蓄を続けるうえでは、金利の高さだけでなく、簡単に利用できることや、手間をかけずに続けられることも重要なのです。

5.前島密と郵便貯金から学べる3つのこと
貯蓄を続けるには、収入から先に貯蓄分を取り分け、無理のない金額で始め、目的に応じてお金を使い分けることが大切です。
1.お金を貯めるには意志より仕組みが重要
「今月は節約しよう」と思っていても、口座に使えるお金が残っていると、予定外の買い物をしてしまうことがあります。
そのため、毎月残ったお金を貯蓄するのではなく、収入が入った段階で貯蓄分を取り分ける方法が有効です。
金融庁は家計管理の基本として、収入と支出を把握し、収支を黒字にしたうえで、黒字分を貯蓄することを挙げています。
また、余った分を貯めるのではなく、給与が入ったタイミングで一定額を貯蓄へ回す「先取り貯蓄」も紹介されています。

2.まとまった金額がなくても始められる
「収入が増えたら貯金を始めよう」
「生活に余裕ができてから積み立てよう」
そう考えていると、貯蓄を始める時期が先延ばしになってしまいます。
大切なのは、最初から大きな金額を貯めることではありません。
毎月の家計に無理のない金額を決め、貯蓄を生活の一部にすることです。
たとえば、毎月3,000円や5,000円でも、続けることで貯蓄の習慣が身につきます。昇給したときや固定費を減らせたときに、積立額を増やすこともできます。
金額の大きさより、まず仕組みを動かし始めることが重要です。
3.貯蓄の目的を決める
ただ「お金を貯めなければならない」と考えるだけでは、途中で使ってしまいやすくなります。
そこで、何のために貯めるのかを決めておきましょう。
たとえば、次のような目的があります。
- 病気や失業などに備える生活防衛資金
- 税金や車検、家電の買い替えに備える資金
- 旅行や趣味に使う資金
- 住宅購入や教育に備える資金
- 老後の生活に備える資金
使う目的と時期によって、お金を置く場所も変わります。
近いうちに使うお金
近いうちに使う予定があるお金や、緊急時に必要なお金は、必要なときに引き出しやすい預貯金で確保する方法があります。
当面使う予定のない長期資金
一方、当面使う予定のない長期資金については、リスクを理解したうえで資産運用を検討する選択肢もあります。
ただし、貯蓄と投資は同じではありません。
預貯金は、必要なときに使うお金を準備する役割が中心です。投資には資産の成長が期待できる一方、元本割れなどのリスクがあります。
まず家計の基盤となるお金を確保し、そのうえで目的に応じて使い分けることが大切です。

6.今日からできる先取り貯蓄の始め方
先取り貯蓄は、収入が入った段階で一定額を生活費から分け、自動的に貯蓄へ回す方法です。
先取り貯蓄とは、給料などの収入が入ったら、使う前に一定額を貯蓄へ回す方法です。
考え方は、次の式で表せます。

「収入-支出=残ったお金を貯蓄」とするのではなく、最初から貯蓄分を生活費とは分けておきます。
手順1.毎月の手取り収入を確認する
家計管理では、額面給与ではなく、税金や社会保険料などが差し引かれた後の手取り収入を基準にします。
賞与や臨時収入を前提にせず、通常月の収入で続けられる金額を考えましょう。
手順2.無理のない金額を決める
最初から高い目標を設定する必要はありません。
毎月1万円が難しければ、3,000円や5,000円から始める方法もあります。
大切なのは、生活費が足りなくなり、毎月貯蓄を取り崩す状態にしないことです。
手順3.自動で移す設定をする
給料日やその翌日などに、生活費用の口座から貯蓄用口座へ自動でお金を移す設定をします。
勤務先に財形貯蓄などの制度がある場合は、給与から自動的に差し引く方法もあります。
毎月自分で振り込むよりも、自動化したほうが貯蓄を忘れにくくなります。
手順4.生活費と貯蓄を分ける
貯蓄用口座を、生活費やクレジットカードの引き落とし口座と分けておくと、貯めたお金を日常的に使いにくくなります。
さらに、生活防衛資金、数年以内に使う資金、長期的な資金など、目的別に分けると進捗も確認しやすくなります。

手順5.定期的に金額を見直す
収入や生活環境は変化します。
昇給したとき、ローンの返済が終わったとき、通信費や保険料を見直したときなどは、先取り貯蓄の金額を増やせる可能性があります。
反対に、生活費が大きく上がった時は、無理せず、一時的に減額することも選択肢です。
短期間で無理をするのではなく、家計に合わせて長く続けることが大切です。
7.まとめ|貯蓄は使う前に分ける仕組みを作ろう
貯蓄を続けるには、本人の努力だけに頼らず、収入が入ったら先に貯蓄分を取り分ける仕組みを作ることが大切です。
前島密は、イギリスで郵便局が為替や貯金を扱う制度を学び、日本への導入を進めました。
1875年5月2日に始まった貯金制度は、開始当初から多くの人に利用されたわけではありません。
前島密は貯蓄の必要性を伝え、一般の人が郵便局を通じてお金を預けられる仕組みを広めていきました。
この歴史から学べるのは、貯蓄には本人の努力だけでなく、無理なく利用でき、続けやすい仕組みが必要だということです。
毎月余ったお金を貯めようとしても、計画どおりに残るとは限りません。

前島密と郵便貯金に関するQ&A
Q1.前島密はなぜ郵便貯金を始めたのですか?
A. 前島密はイギリス滞在中に、郵便局が貯金や為替を扱う制度を学びました。
郵便貯金が国民の生活や国の発展に役立っていることを知り、日本への導入を進めました。
Q2.日本の郵便貯金はいつ始まりましたか?
A. 日本の貯金制度は、1875年5月2日に始まりました。
開始当時は単に「貯金」と呼ばれており、「郵便貯金」という名称が使われるようになったのは1887年以降です。
Q3.郵便貯金は最初から広く利用されていたのですか?
A. 開始初期の貯蓄者数は917人で、すぐに普及したわけではありません。
前島密が貯蓄の必要性を伝える活動を続けた結果、1878年には貯蓄者数が1万人へ増加しました。
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