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9割が退場するともいわれるFX、その理由はどこにある?【鹿子木健】

「FXでは9割が退場する」とよく言われます。9割というのは正確な数値ではないとも言われますが、ある程度の説得力を持った言説として広く知られています。
相場から退場してしまう人たちにはいくつかの共通点があります。今回は、その「負けパターン」にフォーカスしてみましょう。
もしあなた自身に思い当たる節があれば、ぜひこの機会に、背筋を正して自分を見直してみてください。
1.そもそも退場率の高さは何に由来する?
FXの高い退場率の高さにはさまざまな理由がありますが、二つ取り上げてみましょう。
一つは、FXがゼロサムゲームであるという事実です。相場は誰かの損失が誰かの利益になる構造になっており、勝ち続けるトレーダーの陰には負けているトレーダーがいます。
そしてもう一つは、機関投資家の存在です。FX市場には、銀行・証券会社・ヘッジファンドなど、巨額の資金と高度なノウハウを持つプロのトレーダーが多数参加しています。
機関投資家は大口注文で相場を意図的に動かすことすら可能ですが、個人投資家は彼らと同じ土俵で戦わざるを得ません。もともと個人投資家には不利な構造になっているのです。
これらの構造的要因が、FXにおける退場率の高さ、つまり多くの個人投資家が結果的に撤退を余儀なくされる原因の一部となっています。
ただ、それ以前に、トレーダー個人に起因する「行動的要因」があります。今から解説していきましょう。
2.FXで失敗する人の共通点とは
(1)カリスマトレーダーやネット情報への強い依存心
「他者依存」「情報依存」は、FXで失敗する人の多くに共通して見られる現象です。成功している(とされる)人の相場観や手法、あるいはその人が配信するメールマガジンなどに頼りきりになってしまうのが一例です。
成功している先人に学ぶのは素晴らしいことです。ただそれが、「その人の言葉がないと不安」「配信される情報がないと何も考えられなくなる」となってしまっては、話は別です。これは「依存」であり、依存とは不安を掻き消そうとする行為であるからです。
このような過度の崇拝は、自分を奴隷に貶めてしまいます。自分の頭で考え、行動し、自分の人生を自分で動かしていく力が失われてしまうのです。
(2)孤独なトレードで監査機能が働かない
例えば、あなたがとある会社の経理担当だったとしましょう。「お金」という側面から見て、会社にとっては非常に大切な役職です。もしもその経理担当者が他のだれからもチェックされないとしたら、どういったリスクが考えられるでしょうか?
そうです。不正を働く可能性がありますね。粉飾したり、会社資金を横領したりと、大変なことになってしまいます。
トレードは一人でやるものだとほとんどの人が思っていますが、それは大きなリスクです。自分で決めたルールを破って大きな損失を出しても、報告義務がない。そうして一つの負けを取り返そうとして底なし沼にハマり、市場から退場する原因になってしまうのです。
(3)トレード記録をつけず、成長のヒントを見つけられない
人間の記憶は都合よくできています。嫌なことはすぐに忘れますし、成功体験は脚色されていつまでも覚えているものです。嫌なことを忘れるのはストレスに押しつぶされず生きていくための防衛機能でもありますが、かといってそれでは困りものです。
トレードについては特にそうです。負けた時のことを忘れてしまっては、いずれ同じ失敗を繰り返すことになります。
3.失敗を知ることで成功パターンが見えてくる
ここまでは「典型的な失敗パターン」を見てきました。こうした失敗を反面教師とすることで、成功へのいろいろな道筋が見えてきます。
先ほど挙げた3つの失敗パターンを掘り下げて、「どうすれば成功するのか」を考えていきましょう。
(1)カリスマトレーダーやネット情報を主体的に「利用」する
「あの人が言ったとおりに取引したのに損失が出た!」とやるせない思いになっていたら、あなたは依存状態にあります。こうした奴隷のような状態は、自分の主体的な判断まで外から与えられるものに頼っている、極めて危険なものです。
奴隷の反対は「主人」です。依存から抜けるには、主人になればよいのです。あなたの人生の主人はあなた以外ではありえません。宗教ではよくないこととされていますが、崇拝対象を「御利益のために利用しよう」と考えてみましょう。
カリスマトレーダーやインフルエンサーに身も心も捧げてしまうのではなく、自分のためにありがたく利用させてもらう、ぐらいの姿勢でいればよいのです。「利用しよう」としている限りは、判断の主体が自分にあるからです。
ただし、相手に対する敬意を忘れてはいけませんよ。
(2)トレード結果を共有する相手を作る
売買の判断や操作は確かに一人でやるものですが、誰にも報告義務がない、誰からも監視されていないことは大きなリスクです。「損失が出た。でも隠したい」という意識はリベンジトレードへ投資家を駆り立て、全財産を失って借金に走る悲劇につながります。
それを避ける方法は「第三者のチェックを受ける」ことですが、今一つピンと来ないかもしれません。そこで投資の事実を、たとえば家族と共有してみましょう。友人やトレード仲間でも良いでしょう。
「自分の投資結果を知る誰かがいる」事実が、あなたにブレーキをかけてくれます。例えばFX投資の損益計算書や取引残高報告書を家族と共有すれば、損失が出た焦りや不安も共有してくれて、冷静になる大きな助けになります。利益が出れば、喜びも倍増です。
(3)項目を絞ってトレード記録を取る
これに関しては、次の10項目を目安としてみましょう。
①トレードした日時
②トレードした通貨ペア
③トレードした時間足
④売買の方向
⑤売買の数量(ロット)
⑥トレードに踏み切った理由、判断の根拠
⑦損切り価格、利食い価格
⑧決済した日時
⑨損益額
⑩その他気づいたこと(メンタルの状態など)
あまり詳細に書く必要はありません。10項目埋まれば十分です。最初から頑張りすぎると「継続」が困難になってしまいます。まずは3日、次は1週間、その次は1か月。1か月も続けることができれば、その後はもう大丈夫でしょう。
手書きでノートに記録するのも良いですが、エクセルやスプレッドシートを使えば、入力も手軽に済みます。
記録は「反省」のためだけでなく、「再現」のためにもあります。勝ったトレードの根拠を知ることも、次の勝ちにつながる大切な要素です。根気強く頑張っていきましょう。
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