今抑えたい!ポンド円とブレグジット問題の基礎・今後(前回のおさらい)【FXジャック】
前回のおさらい
ニュースなどで連日報じられている「ブレグジット」問題。
この問題により、大きな影響を受ける可能性の高いポンド円相場が再注目されています。
今回は、ポンド円相場を現在・過去そして今後の3ポイントに分けて解説していくうちの第2回目です。
前回は過去のチャートからポンド円に影響を与える要因を考察しましたが、今回はそれをもとにポンド円とイギリスの現在の動向を探っていきましょう!
前回の記事はこちら:今抑えたい!ポンド円とブレグジット問題の基礎・今後【FXジャック】
ポンド円の最新ニュース
前回の通り、イギリスがEUを正式離脱することが決まり「合意なき離脱」を回避することができました。
比較的円満にブレグジットを成し遂げたことでイギリス経済にポジティブな空気が流れ、私を含め「あれ、意外と安定しちゃうのでは?」と考えた方は少なくないかもしれません。
しかし、そう簡単なものではありませんでした。
こちらのチャートをご覧ください。
正式離脱が承認された1月末に値動きが上向き、拮抗した後に下落しています。
要因として考えられるのは、3月から本格化するイギリスとEUの自由貿易協定(FTA)の交渉が難航しそうであること、そしてその先に協定の破談が待ち受けているかもしれないことが挙げられます。
以下では、イギリス経済に不安を生じさせポンドが下落する結果となった一連の出来事を解説していきます。
EU離脱に向けたこれまでの動き
まずはイギリスのEU離脱に向けた昨年末から現在までの動きを振り返り、今後のポンド円の動向を考察しましょう。
2019年12月17日:ジョンソン首相が移行期間の延長を禁止する意向を表明
イギリスがEUを離脱すると、改めてEUと貿易協定を結ぶ必要があります。
?イギリスのジョンソン首相はこの貿易協定の結び直しを『EU離脱後の激変緩和のために設けられる11ヶ月の移行期間』内に完結させる考えを示しました。
?一般的な貿易協定を結び直すための交渉期間と比べると11ヶ月はかなり短く、市場の不安を呼んでいます。
?普通の協定の場合でも大仕事なのに、ブレグジットという大問題をたったの11ヶ月で解決するというのは、私たちの目から見ても無茶な感じがしますよね。
?にもかかわらず、ジョンソン首相はこの移行期間の延長はしないとし、2019年12月17日には移行期間の延長を法律で禁止する意向を表明しました。
?EUは、新たな貿易協定の早急な妥結を強いられていることに懸念を抱いており、この期限について「貿易協定を交渉し合意に至るには問題がある」との姿勢を示しました。
2019年12月27日:欧州委員長「英との交渉は延長が妥当」
EUの執行機関にあたる欧州委員会のフォンデアライエン委員長はフランス紙で「2020年の中盤に貿易協定の交渉を延長するのが妥当だと思う」と語りました。
EUのトップが「ちょっと落ち着こうよ。」と発言したわけです。
しかし、当のイギリスのジョンソン首相は「通商交渉の延期はない」と断言しており、意見が真っ向から対立しています。
2020年1月22日:ついにブレグジットへ!EU離脱協定案、英議会を通過!
2020年1月22日、イギリス議会でEU離脱協定案が通過。
この後、エリザベス女王に認められれば欧州連合(EU)離脱協定案が成立する、というところまで漕ぎ着けました。
2020年1月31日:イギリスがEUを正式離脱する運びに!
29日に欧州議会は、イギリスの欧州連合離脱協定案を正式に承認。
これらを経て、イギリスは1月31日23時(イギリス時間)にEUを離脱しました。
今後、激変緩和のために設けられた2020年年末までの『移行期間』に入り、イギリスとEUは貿易や安全保障などに関する新たな関係についての交渉が始まっています。
2020年2月11日:イギリスのGDPが縮小。国内でも不安が広がる
2020年2月11日に「2019年10月〜12月期におけるイギリスの物価変動を除いたGDP成長率が0%だった」との速報が入りました。
この2019年10~12月期のGDP成長率は、2019年7〜9月期の成長率+0.5%からの縮小。
この期間はまさに、イギリスで総選挙が行われるなどブレグジットが大きく進んだ時期です。
先行きへの不安により個人消費や企業による投資も伸び悩んだと考えられます。
イギリス国内でも経済情勢に対する不安が広がったことが伺えます。
2020年2月18日:EU離脱後の英移民制度を発表
イギリスの内務省は2020年2月18日に、ブレグジット後の新たな移民制度を発表しました。
?新たな移民制度は、技能などに基づくポイント制になっており、規定されたポイントを満たさなければ就労できないことになっています。
?この制度によって外国人の未熟練労働者の流入を抑え、イギリス国内企業のスタッフの維持・生産性の向上を目指す狙いです。
2020年2月27日:6月までにFTAの進展がなければ破談!?
イギリス政府は27日、EUとの自由貿易交渉(FTA)に関する方針を発表しました。
?その内容は「6月までに一定の進展が得られない場合は交渉を決裂させ、FTAなしで移行期間の終了を迎えることも辞さない」というもの。
?EUとの貿易に関税がかかることも止むを得ない、というスタンスを示したのです。
?同時期にポンド円の急速な下落が起こったことからも、離脱を巡るゴタゴタによって生じるイギリス経済への悪影響が懸念されていると推測できます。
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ブレグジットでポンドが下落した時に考えられる影響
ここまで、ブレグジット関連がポンドに与えた影響を追ってきました。
しかし、その影響はポンドだけにとどまりません。
ブレグジットでポンドが下落すると他の国にも影響が出ることが予想されます。
ここからは、具体的にどこにどのような影響が出ると想定されるか確認しておきましょう。
円に対してEU諸国の通貨が下落する
ポンドが下落すると、ポンドと関連性の強いEU諸国の通貨にも悪影響が与えられると考えられます。
このことを前提とすると、ヨーロッパ経済全体で下落が進むと考えられ、相対的にEU諸国の通貨に対し円の価格が高騰すると予測されます。
ちなみに、上記のような動きに対し具体的なリスク回避の方法は売りから入るトレードが得策です。
売りから入る取引方法については以下のページで紹介しているのでご覧ください。
ポンドに対して一部のEU諸国の通貨が上がる
ポンドが下がると関連性の高い通貨は下落が予想されますが、一部EU諸国の通貨は値上がりするとも考えられます。
片方が下がればもう片方が上がる、シーソーのようなイメージです。
ポンドに対して値上がりすると予想できる通貨としては、ユーロやスウェーデンクローナ、デンマーククローネなどが挙げられます。
ドルに対して円が上昇する
ブレグジットの影響はEU諸国の通貨以外にも波及すると考えられます。
その一つがドルに対する円高です。
世界経済に不安が生じると、ドルよりも円の方がリスクヘッジに有効だと考えられ、円買いにつながる傾向があります。
まとめると、以下のような流れが予想されます。
- ブレグジットでヨーロッパの経済情勢が悪化する
- 世界経済の不安から円買いにつながる
- 結果的にドルに対する円高が起こる
ポンド・EU諸国・米ドル・日本円の力関係
ブレグジットによってポンドが値下がりすると、周辺諸国の通貨との関係性も変わってきます。
ポンドが弱くなると、イギリスと関係性が強いEU諸国の通貨も続いて下落することが想定されるのです。
さらに世界経済の先行きが暗くなると、米ドルを売り、円を買う動きが強まると考えられます。
ここまで確認してきた点を踏まえ、想定される主な通貨の力関係を整理してみましょう。
想定される主な通貨の力関係(強い順)
- 円
- 米ドル
- ユーロ、スウェーデンクローナ、デンマーククローネ
- ポンド
この順から、ポンド円が最も利益が期待できる通貨ペアと言えます。
また、リスクヘッジのコツについては以下のページで紹介しています!
ポンド円で今後注目したい2つの予測ポイント
第一回でも解説をしましたが、ポンド円にはイギリスの政策金利、経済状況、そしてブレグジットが深く影響します。
この項では上記3点の中で現在のポンド円の推移を裏付ける要因を確認していきます。
注目ポイント1)政策金利
イギリスは他国と同様、景気が良くなると政策金利を上げる可能性があります。
政策金利が上がるとポンド高円安につながるのが一般的な流れです。
一方で、イギリスの景気が悪くなると利下げが行われる可能性が高いため、ポンド安円高につながると予想できます。
上記のようにイギリスの今後の景気により政策金利の上げ下げが決められ、ポンド円に大きく影響してきます。
そのため、イギリスの景気に直接関連するEUとの関係の行方、イングランド銀行政策金利発表や原油価格などの動きに注目していきたいところです。
注目ポイント2)EUとの自由貿易協定
先ほども触れた通り、EUとの自由貿易協定の進展にも注目です。
3月から交渉が本格化しますが、6月までに一定の進展がなければ破談の可能性も考えられます。
ただでさえ複雑な問題である上に交渉期間も短く、現時点から交渉難航が予想されています。
このような一連の流れから「合意なき離脱」の不安が再燃し、1月末にはポンドの大幅下落が起きています。
今後のポンド円の動向を見定めるには、自由貿易協定がどのように収束するのか、またイギリスは協定を破談にし「合意なき離脱」を実現させてしまうのかに注意が必須です。
まとめ
今回はイギリスとEUの政治情勢と値動きの関連性や、今後の値動きに影響を与える可能性のあるトピックを取り上げました。
ブレグジットは広範囲に影響を及ぼす問題だけに、私自身広い視野で市場を見渡さなければいけないな、と再認識しました。
今回までは情報を元に考察することが主でしたが、最終回である次回は実践編です。
私が普段行なっている取引方法だけでなく、実際に売り買いの目安にしている指標をご紹介していきます。
お見逃しなく!
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・記事内の「使用している人の80%以上が利益」については、2018年3月31日時点で口座残高があり、1年後の2019年3月31日時点にループイフダン口座で運用中のお客様を対象とし、その中で為替差損益とスワップ損益により有効証拠金が増えたお客様の割合を調査した結果となります。(当社調べ)
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